「学び」を通して外宮前地域の活性化を!「伊勢やまだ大学」

2021/05/21

伊勢やまだ大学

    運営委員長  浦田奈々さん ※写真右

    元運営委員長 奥田宗吾さん ※写真左

 

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<伊勢やまだ大学>

伊勢神宮外宮周辺の「山田」の街の

商店街をキャンパスとし、学びと交流の場を提供する「市民大学」。

伊勢やまだ大学事務局(伊勢商工会議所内)

E-mail  ise.yamada@gmail.com

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古くから伊勢神宮の参拝者で賑わってきた伊勢の街は、

内宮周辺を「宇治」、外宮周辺を「山田」といいます。

宇治はおかげ横丁などの観光商業施設により今も賑わいが続く一方、「山田」の街はいつしか活気を失っていきました。

そんな状況を打開するべく2014年に誕生したのが、外宮前の商店街をキャンパスとした「伊勢やまだ大学」です。

 

 

 

開校のきっかけは

山田活性化プロジェクト

 

伊勢神宮外宮前には、しんみち商店街・高柳商店街・うらのはし商店街・浦口商店街・二俣辻久留商店街・栄町商店街・さくら通り商店街・伊勢市駅前商店街・明倫商店街・外宮参道発展会という10の商店街があります。これらを統括しているのが伊勢市商店街連合会で、遷宮行事や様々な地域イベントで商店街の枠を超えて協力し合ってきました。そんな連合会の青年部で活動していた高柳商店街の呉服屋「おく宗」の店主である奥田宗吾さん。廃れてきた外宮周辺の「町の魅力再発見プロジェクト」と題して、2014年秋頃より改めて街を練り歩き、普段見落としている歴史ある旧跡や神社仏閣を訪れました。そうして発見した魅力的な名所や名物親父などを紹介したり、商店街の名物グルメ対決など新しい視点で編集したガイドブック「伊勢やまだマップ」を製作し、多くの反響を呼びました。

 

 

そうした町おこし活動や勉強会に熱心に取り組む中、日本各地に広がり始めていた「まちゼミ」を知ります。「まちゼミ」とは、地域商店の店主が自分たちの専門分野を活かした文化講座を開くことで、地域住民と交流し商店が活性化していくというプロジェクト。奥田さんら青年部は、この「まちゼミ」のシステムを「お店ゼミ」として取り入れ、更に伊勢の街の歴史や文化について専門講師から学べる「特別講座」、そして生活や趣味に関する専門講師を招いた「一般講座」などを開く市民大学「伊勢やまだ大学構想」を考えました。それまで商店街連合会が取り組んできたのは、主に年末大売り出しやクリスマスの合同抽選会など。一時的な集客に効果はあるものの、もっと年間を通して継続的にお店に通ってもらえる仕組みづくりが必要だと考えていた奥田さん達は、伊勢やまだ大学開校に向けて本格的に動き出します。

 

 

 

市民大学構想の実現に向け

1件ずつお店を周り、想いを伝えた日々

 

“外宮前の商店街全体を大学のキャンパスにする”という大胆な構想は、商店街の年長者らにはなかなか受け入れてもらえず「もう高齢だからそんな悠長な企画は無理だ!」「すぐに利益が出るイベントじゃないと!」と最初は説明する場も与えてもらえませんでした。そんな中でも、奥田さん達は諦めずに何度も商店街のお店1件1件に足を運び、説得を重ねます。

 

 

そしてついに青年部の熱い想いが伝わり、商店街連合会の承認を得られることに。奥田さんは、初代運営委員長として立ち上げに奮闘します。まず第一の課題は、商店街の店主に「お店ゼミ」の講師になってもらうこと。「講師になる」ことに躊躇する店主が多く、また「講座では販売・営業しない」という規則があるので、直接売上には繋がらない広告料などの投資に疑問視する声もあったといいます。「とにかく講師になってもらう説得が大変でした。1回講座に来てもらった方からの口コミでファンを増やしていくという長いスパンで考えれば、投資する価値はあるんだけど、即効性は保証できない。逆に、快く講師になってくれたお店の講座に生徒が集まらなかったり、お店や店主の魅力を伝える工夫も色々考えました。」 そうした地道な働きかけが実り、201411月にようやく「伊勢やまだ大学」は無事に開校。当初、お店ゼミに参加してくれたのは新道商店街約60店舗中10店舗、高柳商店街の30店舗中は5店舗ほどだったといいます。入学希望者は、初回登録料500円を支払うと、学生証が発行されます。そして、講座情報がメールで届いたり、特別講座の受講割引が受けられます。※年会費は無料

 

▲お店ゼミの講座一覧(2020年開講分)

 

 

 

 ▲天野園芸さんが講師を務める寄せ植え講座も大人気!

 

 

 

東京山の上大学や立命館大学と提携

地域外の人々との交流で広がる輪

 

街全体をキャンパスにするという「伊勢やまだ大学」の先駆的な取り組みは全国的にも注目を集め、開校6年目の現在は地元だけでなく県外からの学生を含め延べ1,300人もの学生が登録しています。そんな中、伊勢やまだ大学の運営スタッフは東京の山の手線の上部エリアの市民大学の立ち上げアドバイザーも務めることに。そうして2019年夏に開校した「東京山の上大学」と11月に合同合宿研修会を行い、姉妹校提携を締結しました。講師やコーディネーターの派遣、スタッフや学生の交流など、様々なコラボレーションを企画したものの、コロナの影響で企画は一旦休止中。東京山の上大学の取り組みは、地域おこしというよりは、カレーのスパイス講座や有名シェフの料理講座など、OLやサラリーマンの朝活やカルチャースクールとしての意義が大きいといいます。それでも、伊勢やまだ大学と共通しているのは、地域の「人」にスポットを当てたプロジェクトだということ。身近にいる魅力的な「人」にスポットを当て、その人に集まるコミュニティーから生まれる交流や学びが人生の豊かさへと繋がっていきます。

 

 

 

▲東京山の上大学と姉妹校提携

 

また、外宮前の「町の魅力再発見プロジェクト」から長年伊勢の発展に関わってきたコンサルタントの高田氏が、2020年より立命館大学の食マネージメント学部の教授に就任。高田ゼミのフィールドワークとして伊勢やまだ大学と連携し、学生が「SNS班」「ガイドブック班」「ツアー班」に分かれ、伊勢やまだ大学グルメ部として活動しました。<SNS班>は、地元住民に人気の飲食店を巡って取材したことをインスタグラム(伊勢やまだ大学グルメ部)で発信。<ガイドブック班>は、外宮周辺の食と歴史を紹介する小冊子「げくうでまんぷくぅ」を製作し、700部発行。伊勢市駅周辺の観光案内所や飲食店、宿泊施設に設置されました。また、外宮周辺の街歩きツアーを企画し、街歩きマップなどをまとめたガイドマニュアルを製作していた<ツアー班>の活動は、残念ながら新型コロナウイルスの影響で中止を余儀なくされました。活動は新3回生に引き継がれていきます。

 

 

 

▲立命館大学の学生と意見交換する伊勢やまだ大学運営スタッフ

 

 

浦田運営委員長は、「学生さんが取材をする中で、『伊勢の人は道を親切に教えてくれたり、気軽に店に招き入れてくれたり、とても優しい!』と言ってくれて、伊勢の良さを改めて教えてもらいました。長年伊勢に住んでいる自分達とは違う着眼点で、また10代の若い目線で伊勢の良さをPRしてもらえて嬉しかったです」と語ってくれました。

奥田元運営委員長も「学生さんのプロジェクトを全力でサポートすることで、街が活気づいたり、新たな発見やアイディアが得られたり、良いこと尽くし!これからも、様々な地域外の方々と活動することで、よりダイナミックに伊勢を発展させていきたい!」と語ってくれました。

 

 

▲ガイドブック班が取材・撮影・編集した「げくうでまんぷくぅ」

 

 

 

「学び」を通して人生が豊かに

魅力的な人達が街を活気づける

 

「伊勢やまだ大学」に通う学生のほとんどは50~60代。定年退職し、興味のある分野を学びたいという知識欲が高いものの、どう学んでいいのか分からない方々も多いのです。そこで、地域商店の店主と交流しながらイキイキと楽しく学べるのが伊勢やまだ大学の醍醐味。今はどんな物でもインターネットで簡単に買える時代。商品の使い方やお手入れの方法もyoutubeで見れますが、やはりその商品の専門家として長年販売してきた店主だからこそ教えられる技術や知恵があり、それを直接学べる「お店ゼミ」の意義は大きく、安心感があります。いつの時代も、「人」に一番寄り添えるのは「人」であり、お店にわざわざ足を運ぶ理由になります。そうした出逢いや感動体験が、人々の心を豊かにさせ、伊勢に住む人々の教養を深めていくことができるのです。‟魅力的な人を増やすことが、魅力的な町づくりに繋がる”。その「人づくり」の舞台となっているのが、伊勢やまだ大学です。

 

 

▲奥田さんが講師を務める「簡単男の着付け教室」

 

 

 

 全国から沢山の人々が集う伊勢

 だからこそできるダイナミックな町おこしを

 

浦田運営委員長は、しんみち商店街に大正時代から続く老舗料亭「魚勘」の若女将。奥田元運営委員長は、江戸末期創業の高柳商店街の呉服屋「おく宗」の店主です。伊勢の商店街で生まれ育ち、代々受け継いできたお店を守りながら、「伊勢やまだ大学」という町おこしの活動にも全力で取り組み続けるお2人。人口減少や高齢化、空き家・空き地問題など課題は多いですが、諦めたらそこで終わり。新しいプロジェクトにどんどん挑戦し続けることで、お客様やクリエイター、学生などとの新たな出逢いの輪が広がり、外宮界隈が活気づいてきました。今後も、伊勢のことを伊勢だけで解決しようとするのではなく、地域外にも関係人口をどんどん増やして、スケールの大きな町おこしプロジェクトとして、次世代へ繋げていきたいと話してくれました。奥田さんがいつも大事にしているのは、「とにかく早く行動すること!」。市や県などの行政にも出向いて積極的に働きかけたり、東京の三重テラスでワークショップをしたりとフットワークの軽さが伊勢やまだ大学の間口を広げてきました。「みんなでわいわい話し合い、前向きにプロジェクトを進めていく過程が本当に楽しい!1つ1つの挑戦や出会いが、伊勢やまだ大学をここまで大きく成長させた。『継続は力なり』を実感しました。地域の1人1人が自分の仕事やお店、商品にもっと自信を持って、小さく構えずに大きく活躍してもらいたい。お店単独ではできない企画も、伊勢やまだ大学という「学びのフィールド」だからこそできることもあるはず。ポジティブに活用してもらえたら」と語ってくれました。天照大御神が祀られる伊勢神宮を中心に、全国の人々が集う伊勢の街。この街の可能性はまだまだ無限に広がっています。これからも地域外を巻き込むダイナミックな伊勢やまだ大学の挑戦に注目です。

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